保育室の壁に並んでいる子どもたちの絵。同じ日に、同じ題材で取り組んだはずなのに、使っている色も形もまったく違います。大きく描く子もいれば、紙の隅に小さく描く子もいる。たくさんの色を使う子も、一色を気に入って使い続ける子もいます。制作活動の面白さは、きれいな作品を完成させることだけではありません。一人ひとりが感じたことや考えたことが、それぞれ違う形で表れることにもあります。そんな日々の姿を含めた大和高田市の認定こども園での毎日をもっと見ることで、子どもたちがどんな経験を積み重ねているのかを想像するきっかけにもなります。
子どもが絵を描いていると、大人はつい「これは何を描いたの?」と聞きたくなります。
けれど、子ども自身は最初から何かを完成させようとしているとは限りません。
赤いクレヨンを何度も動かすことが楽しい。
丸が描けたことが面白い。
別の色を重ねたらどうなるのか試してみたい。
描いている途中で、そこから物語を思いつくこともあります。
最初はただの線だったものが、
「これは電車」
「ここにお家がある」
と、子どもの中で少しずつ意味を持ち始める。
作りながら考えが変わることも、幼児期の表現の面白さです。
制作でも同じことが起こります。
紙、箱、布、自然物など、目の前にある材料を見て、
「これをくっつけたい」
「もっと長くしたい」
「ここに穴を開けたらどうなるかな」
と試していきます。
思ったようにつかないこともあります。
切りすぎてしまうこともあるでしょう。
そんなとき、すぐ大人が完成させてしまうのではなく、
「どうしたらいいかな」
と一緒に考える。
別の材料を試してみる。
もう一度作り直してみる。
完成品だけを見ると分からない、たくさんの試行錯誤があります。
そして、友だちの作品が刺激になることもあります。
「それ、どうやって作ったの?」
「ここをこうしたよ」
子ども同士の会話から、今まで知らなかった方法を知る。
そのまままねをすることもあれば、そこから自分なりに違うものを作り始めることもあります。
誰かのアイデアに触れることで、自分の表現も広がっていきます。
大切なのは、全員が同じものを作れることではありません。
むしろ、同じ材料を使ったのに違うものができる。
そこに一人ひとりの考えがあります。
「先生と同じように作ること」が目標になってしまえば、子どもが自分で考える余地は少なくなります。
材料を見て、自分ならどう使うかを考える。
好きな色を選ぶ。
途中で変更する。
最後に「できた」と自分で決める。
その過程には、小さな選択がたくさんあります。
制作物を飾ることにも意味があります。
自分の作ったものが園の中に飾られている。
先生や友だちが見てくれる。
お迎えに来た家族へ、
「これ、ぼくが作った」
と伝える。
自分が考えて作ったものを大切に扱ってもらう経験は、「自分の考えも大切にしていい」と感じることにもつながります。
一方で、作品を比べる必要はありません。
色をたくさん使ったから良い。
細かく作れたから上手。
そうした一つの基準だけでは、子どもの表現は測れません。
昨日まで絵を描かなかった子が、今日は一本の線を描いた。
いつもは先生に頼んでいた子が、自分で材料を選んだ。
それも、その子にとっては大きな変化です。
園生活には、完成品として残らない経験もたくさんあります。
途中で壊してしまった作品。
納得できず作り直したもの。
友だちと一緒に作り、最後には形がなくなったもの。
たとえ手元に残らなくても、その過程で考えたことや工夫したことは経験として残っていきます。
幼児期に大切にしたいのは、「正しく作れること」だけではありません。
自分はこうしたいと思う。
やってみる。
思った通りにならなければ、別の方法を考える。
そして、自分なりに「これでいい」と感じる。
描くこと、切ること、貼ること、組み立てること。
その一つひとつを楽しみながら、自分の思いを形にしていく。
同じ材料から違うものが生まれることを楽しめる環境は、一人ひとりの「その子らしさ」を大切にする園生活の魅力の一つです。